妻とどうしても性格が合いません・・・ 性格の不一致で離婚する場合の離婚の進め方を教えてください。
世の中に生きる人間には一人一人個性があります。趣味や好みも一人一人異なります。自分とぴったり同じ趣味や嗜好、価値観を持つ人と巡り合うことは難しいことです。いくら仲のいい友人同士でも、ふとしたすれ違いや、ちょっとした意見のずれによって喧嘩に発展することは珍しくありません。これは夫婦でも同じです。趣味や好物、価値観の違いによって夫婦喧嘩や離婚に発展するケースは少なくありません。
今回ご紹介するのは、性格の不一致で悩む夫婦の架空事例です。
相談者であるAさんは両親の勧めで妻とお見合い結婚しました。四十年以上前のことです。以来、妻とは夫婦として苦楽を共にしてきたのですが、Aさんには生活の中でずっと悩んでいることがありました。それは、見合いによって結婚した妻と意見が合わないこと、そして趣味や子育ての方針がまったく違っていたことでした。ずっと我慢して妻の意見を取り入れるようにしていました。これがAさんの長年の悩みでした。
架空のA夫婦を例に、性格の不一致による離婚の進め方や解決方法を考えてみましょう。まずはA夫婦が離婚を考えるようになるまでの過程をもっと詳しく紐解きます。
お答えします
趣味も好みも考え方も合わない!A夫婦の事情
Aさんは二十代の時に両親の紹介で妻と出会いました。お見合いの後に何度か食事を重ね、現在の妻と結婚しました。妻とは四十年以上連れ添っています。その間、Aさんはずっと勤めていた会社を年齢により退職し、妻は専業主婦として家庭を支えてくれました。
妻は家事も育児もてきぱきとこなすタイプでした。Aさんは家庭生活にはまったく不満はありません。むしろ、自分が仕事に専念できたのは妻の内助の功があったからだと感謝しているくらいです。しかし、Aさんにはたった一つだけ妻に対して不満がありました。
妻に対するAさんの不満とは、結婚当初からとにかく意見や趣味、考え方が合わないということです。子供は外でのびのびと遊ぶべきと考えるAさんに対し、妻は勉強が最優先であり一定の成績以上を取らないと子供が友人と遊ぶことは許さないという考え方でした。二人で旅行に行こうと誘った時もAさんが個室露天風呂のついた温泉宿がいいと主張したことに対し、妻は有名芸能人がよく宿泊するステータス性の高い高級ホテルがいいと主張しました。
テレビを見ていても番組の好みがまったく合いません。外食をしても、ファミレスや居酒屋のように軽く入れる店が大好きなAさんに対し、妻はフレンチやイタリアンのコース料理を出すような店でないと雑多な印象がして嫌だと言います。Aさんには家族でキャンプをしたいという夢もありましたが、妻がキャンプは好きではないと言って断固反対したためかなっていません。Aさんの趣味は山の散策や近隣への旅行やドライブなどでしたが、妻の趣味は家でピアノを弾くことや刺繍をすることです。衣食住すべてにおいてAさんと妻は重なるところがないのです。
結婚して四十年以上もの間、Aさんはなるべく妻に合わせるようにしてきました。自分が山に散策に行きたくても、妻がピアノの演奏会に行きたいといえば妻に合わせていました。外食や旅行も妻を中心にしていました。小さな我慢の積み重ねですが、正直少し疲れたような気がしています。離婚して自由に生きることのできる時間は僅かしかないと考えます。妻と離婚したいとAさんは考えています。
性格が不一致の夫婦が離婚を検討!解決方法は2つ
性格の不一致で離婚を検討している場合、解決方法は主に2つです。一つは「パートナーとの話し合い」で、もう一つの方法は「調停や裁判」になります。この2つの方法はどちらか一つを選択しなければならないというわけではなく、まずは話し合いをして決着がつかなければ調停を提起するといったかたちで順序立てて行うこともできます。
パートナーと話し合って離婚を決める
話し合いによって離婚を決める方法です。協議離婚ともいいます。話し合いで離婚条件を決め、双方が納得した段階で離婚届を提出します。
この場合の話し合いは必ずしもすぐに離婚を決める必要はありません。まずはお互いの価値観の不一致を是正するための話し合いからはじめて、是正できないとわかった段階で離婚の話し合いに切り替えるという方向性で行うことも可能です。お互いに対する不満や価値観の不一致を話し合いで伝え合うことによって「離婚せずにこのまま様子を見よう」というかたちで決着することもあります。話し合いをしてみたら「実は私もそう思っていた」「直すように努力する」「意見が違う時にはよく話し合って決めよう」など、離婚という結論ではなく前向きな方向に決着する可能性も高いです。離婚の意思が強固でなければ、まずは話し合いをすることで夫婦関係が継続可能かを判断するのも一つの手です。
話し合いをしても前向きな結果が得られなかった場合や最初から離婚の意思が固い場合は、離婚を切り出し、離婚条件を決めることになります。財産分与や養育費なども合意すれば離婚届を提出して離婚が成立となります。離婚には合意したが条件で揉めるという場合は、早めに弁護士に相談しどのように解決すべきか、条件はどのくらいが妥当かをよく考えてみるといいでしょう。
第三者に入ってもらうこともケースによっては有効
話し合いでは、時に第三者に間に入ってもらうことが有効に作用する場合があります。友人や親族など、二人のことを真剣に考えてくれる人に間に入ってもらい、客観的なアドバイスをもらうことによって婚姻関係の継続に繋がることがあります。話し合いの結果として離婚することになっても、離婚までスムーズに進むこともあります。
ただし、第三者に入ってもらう場合は、その第三者が信頼できる人物かよく見極める必要があります。面白がって悪戯に離婚話を煽ったり、夫婦の重要事をよその人に雑談感覚で漏らしてしまったりする第三者は危険です。また、第三者として冷静に話し合いを取り持ってくれる人ならいいのですが、夫か妻どちらかの肩を極端に持つ第三者だと、せっかくの話し合いがまとまらないばかりか余計にこじれてしまうことがあります。
第三者に入ってもらい離婚話を進めるのは一つの有効な方法ではあるのですが、第三者の性格や考え方によってはリスクもあるということです。
調停や裁判で離婚するという方法も
最初から話し合いをしても離婚がスムーズにいかない、または関係修復の余地がないという場合は調停を申し立ててしまうことも有効な解決方法です。調停はラウンドテーブルで当事者と調停委員が話し合うことにより解決を促す方法のため、家ではなかなか冷静になって話し合いができないという場合にもメリットのある方法です。
離婚の場合は基本的にまず調停を提起するという調停前置主義が採用されています。まずは調停で調停委員も交えて冷静に話し合い、まとまらなければ離婚裁判の提起という流れになります。
気をつけなければならないのは、調停や裁判を提起したからといって必ず自分の言い分が通るというわけではないということです。自分の主張を効率よくまとめ、手続きをスムーズに進めるためには、弁護士に相談する方が望んだ結果に繋がりやすいことでしょう。
最終的にA夫婦はどのように離婚問題を解決したか(解決の一例)
依頼人の残りの人生は妻に合わせず自分の好きなことをしたいという希望はとても強いものでした。しかし妻に浮気といった落ち度はありませんから、この理由だけで離婚をするのは難しいことです。Aさんはまず第三者に同席してもらい妻と離婚に向けて話し合うという方法を選択しました。話し合いの席では夫の長年の思いや今後への希望をきちんと妻に話しました。妻とAさんの会話は離婚の話し合いの席でもどこか噛み合いませんでした。
妻は話し合いでの離婚を拒否しました。同席した第三者にも「もっとよく話し合った方がいい」とアドバイスを受けました。Aさんは調停を提起してもっとよく話し合うことにしました。調停の席ではAさん自身の言葉で、とにかく妻と意見や趣味が合わないことや妻に合わせることで精神的に疲れてしまったことを話しました。財産分与も可能な限り妻の意見を取り入れるので、今後の人生をストレスなく過ごしたいと主張しました。
妻は生活面への不安や自分も夫と合わなかったが我慢を続けていたことを理由に離婚を拒んでいましたが、話を続けるうちに離婚を認める態度を見せはじめました。はじめて「夫の離婚に対する思い」と「妻も長年我慢していたという気持ち」が双方に伝わったのです。
最終的にお互いの気持ちを伝えあったA夫婦は、夫婦生活に一切不満がないということを理由に離婚しないという結論を出しました。趣味や食事などを片方に合わせるのではなく、週に日付を決めてそれぞれの好みに合わせることも確認し、もう一度やり直すことになりました。
最後に
A夫婦の解決例はあくまで一例です。夫婦の価値観は、100組の夫婦がいれば100通りのものがあります。夫婦が100組であれば100人の妻と100人の夫がいるわけですから、200通りの価値観があるといえるでしょう。
趣味や食の好み、教育や私生活に対する考え方など、どこか重なる部分があれば家庭生活で衝突することも少ないのかもしれません。今回ご紹介した架空の夫婦であるAさんの夫婦は趣味や嗜好、価値観などのほとんどが不一致でした。意見が合わないと夫婦のどちらかが我慢しなければならないため、連れ添う期間が長いとそれだけ喧嘩や我慢が増えてしまうことでしょう。
解決方法は主に二つです。一つは「話し合い」です。もう一つは「調停や裁判」になります。もちろんこれらの解決方法は併用することができます。どちらの方法が向くのかは、どの順番で行うのかは、夫婦の性格や状況次第であるといえます。「別居しているのか」「パートナーが自分の言葉に耳を傾けてくれそうか」などを総合的に考えて判断する必要があります。
離婚の決意が固い場合は最終的に財産分与や養育費などの話になることを見据え、早めに離婚問題を得意とする弁護士に相談するといいでしょう。
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